こんにちは。轄kエ翻訳事務所で学術論文翻訳を担当している平井と申します。
分子生物学やバイオテクノロジーをはじめとする生物学全般に関する翻訳や、医学論文、生化学、ライフサイエンスに関する翻訳など、生物学や医学において、複数の分野にまたがる翻訳も扱っています。指名でのご依頼もお受けしておりますのでご相談ください。
今回のテーマは、Wntのシグナル伝達、Hedgehog、TGF-β、Notch、Cdc25、原腸形成、リボソーム(生体内の翻訳会社)についてです。
モルフォゲンは胚の一部から分泌され、周囲に拡散して濃度勾配をつくり、これが遺伝子発現に作用して勾配に応じた細胞の違いを生み出す物質です。発生ではたらくモルフォゲンには、主に4種類のグループがあり、それぞれに別個のシグナル伝達経路があります。また、複数のモルフォゲンが組み合わせて使われることが多いです。たとえばハエの翅という構造ができる場合、背腹軸はWgとNotchが、前後軸はHedgehogとDppがはたらき、複数のベクトルの組み合わせによって翅のパターンが出来上がります。
発生では局所的に増殖を止めることが重要な場所があり、第一は、細胞の分化が始まる場所で、分化の前にあらかじめ細胞周期をG1期で停止させる必要があります。第二は、細胞が移動するときです。たとえば、原腸形成(gastrulation)という大掛かりな形態形成(morphogenesis)が起こる場合、陥入する部分で増殖が一時的に抑えられます。これは、陥入する部分の細胞で特異的に発現するTribblesという翻訳済みタンパク質がCdc25を抑制するために細胞がG2期で停止するからです。この停止がないと、原腸形成はうまくいきません。
発生の過程では、細胞周期のパターンを思い切って変えるという現象がしばしば見られます。受精卵が盛んに分裂する卵割(cleavage)では、全体のボリュームは変わらずに細胞の数だけが増えます。この時期にはS期→M期が繰り返され、サイクリンBは分解されずにいつも高レベルを保っています。エンドサイクル(endocycle)という特殊な細胞周期では、M期をスキップして何回もDNA複製が繰り返されるため、多倍体の細胞(polyploid)ができます。DNA複製ライセンス化のルールを逸脱したように見えるこの現象は、Fzrの活性が高レベルに保たれ続けるために、サイクリンBが徹底的に分解されてM期の開始が不能になるために起こります。
轄kエ翻訳事務所
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