こんにちは。轄kエ翻訳事務所で学術論文翻訳を担当している平井と申します。
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DNA上にはトランスポゾン[transposon]という変なDNA部分が存在します。トランスポゾンはある特定部分のDNAですが、これが勝手に増えて、やたらに細胞DNAのあちこちへ挿入されます。
トランスポゾンはそのDNAの両端に、細胞DNAに組み込まれたり、切り出されたりするのに好都合な特有の塩基配列を持っています。また、その内部には複製酵素の遺伝子や、組み込み・切り出しに働く酵素の遺伝子、ときには逆転写酵素の遺伝子などを持つものもあります。あまり元気に跳び回られたのでは、細胞DNAがぐちゃぐちゃになってしまいますが、ときどき跳び回る程度であれば、細胞死や遺伝子がおかしくなった細胞が出てくる程度が収まるかもしれません。あるいは、翻訳済みタンパク質の皮をかぶって細胞外へ出てくれば、ウィルスと呼ばれる可能性もあります。実は、ヒトにたくさんあるLINEのような繰り返し配列は、かつてはトランスポゾンだったのではないかと考えられています。こういうDNA部分が、ヒトのDNA中の約半分を占めています。
トランスポゾンは現在のところ、飛び跳ねるのに必要な塩基配列を欠いたためにおとなしくなっていますが、かつて飛び跳ねていた最中は遺伝子の異常が高い頻度で生じ、異常な個体が多く誕生していたのかもしれません。死ぬものもたくさん出たと考えられますが、多様性が異常な高頻度で生じたに違いありません。DNAがぐちゃぐちゃになるようなことは大変な事態ですが、これによって哺乳類が誕生する、霊長類が誕生する、あるいはヒトが誕生する画期的な変化の原因になったという可能性は大いにあります。LINEの一種であるAlu配列は霊長類にしかありませんが、他の哺乳類と霊長類が分岐した後で、霊長類の中で飛び跳ねたものに違いありません。安全であるべきDNAにも結構いろいろあるのですね。
轄kエ翻訳事務所
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